青と白を基調としたこちらの抽象画は、五木田作品にとっては珍しい色調です。2009年のロサンゼルスでの個展「Heaven」にて20点近く同様の作品を発表し、すべて完売。こちらはその時に展示されていた作品の内の一つです。
シンプルな色使いに、陰影を使いこなした謎めいた形像は、見る人の想像力を掻き立てます。今までモノクロームの作品を制作してきた中で突然の現れた色彩は、空や海といった自然を想起させるような非常に優しく、穏やかな色。そこにガッシュを重ねたメタリックな表現が加わります。色調がシンプルであるからゆえの「情報量の少なさ」で、その造形や質感といった詳細要素に目が向けられるのは、五木田作品ならではといえます。
今年、国内の個展では初、カラーペインティング作品を発表した五木田さん。自由で軽やかな表現とバリエーション豊かなテクスチャーを備え、常に新しい段階へと進化していく作品に、心が惹きつけられます。